昨日、電子ピアノが我が家に着いた。
と書き始めていた恐らく7年前位のブログの下書きを見つけたので公開してみます。以下、昔書いたもの。
昨日、電子ピアノが我が家に着いた。
電子ピアノをネットで買ったのは今年の1月、日本に戻った時。
子供が気が向いた時に触れるピアノが欲しいな、手軽なのは電子ピアノか、としばらくの間オアハカでリサーチしてた。
オアハカの楽器屋でも、電子ピアノとかキーボードがまぁ売ってはいるのだけれど、とにかく高い。メキシコシティでも意外にそんな変わらない。
昨今の買い物の典型だけれど、欲しい物があった時には現物を見て回った後ネットで詳細情報と値段をチェックしながら目星をつける。
それも面倒だけどメキシコ、アメリカ、そして日本のサイト。
メキシコにAmazonは無いけれどネットで探すと店舗よりは結構安く電化製品などを買う事が出来る。隣のアメリカのサイトだと物によっては半額くらいだったり、さらには日本メーカーの製品だと日本ではさらに安く1/3くらいだったりするのだ。ものによってまちまちだけど。
メキシコの品揃えはやはり少ないけれど、日本には入っていないメーカーがメキシコやアメリカだと買えたり、日本のメーカーの海外向け廉価モデルが意外に良かったりする。
そんな訳で、時々何か買おうとするとき、パソコンの前でどの機種にするか〜どの国のどのサイトで買うか〜と送料関税など鉛筆片手に計算しながら頭を悩ませる。
まぁ、散々考えたあげく、先の日本滞在中に電子ピアノをネットで買って実家に届いたわけなんだけれど、問題だったのはそれが想像以上に大きかったこと。ピアノ本体は12kgなのに、パッケージ混みの重さは18kg近く、ピアノの梱包材もボリュームモリモリ!
折角だから手持ちで持って帰ろうと航空会社に預け荷物の最大サイズを問い合わせていたので、届いた箱を測って数字的には手持ち大丈夫だとは分かる。
けれど普通の海外旅行で運ぶ荷物としてはあまりに大きく、目の前の箱を威圧的存在に感じてしまう程だったのである。何となくこれくらいだろうなぁ、とゆるく想像していたのとやはり実物は全然違うんだよね。
空港でこんな大きな荷物を持っている人っていったら…ボード持ったサーファーくらい。
書いておくと実家からオアハカまでの帰途は、バスで最寄り駅まで、そこから成田へ、成田からはロスとメキシコシティ経由でオアハカまでという予定であった。
ピアノ、買っても持って帰れるかなぁ〜という議論があった時に「飛行機にはきっと乗せられるサイズだから大丈夫」だと断言をした僕に、家族(妻と実家のメンバー)からの「飛行機に乗るからってこんなデカいのもって帰れる訳無いだろう…アホ…」という視線が、背中に当たっているのを感じつつ、眼前には「どうだ!YAMAHAだぞ!おれをオアハカまで持って帰れるならやってみろ」と胸を張っているかの如き巨大な段ボールが迫る、という挟まれた状況であった。(段ボールに「YAMAHA」と大きく入っていたのであってYAMAHAは悪くない)
はっきり言ってこの時点、ピアノが実家に着いて前後からプレッシャーが迫ったとき、気持ちは弱るどころかむしろ燃えていて、こうなったら意地でもこのデカいピアノをこのまま担いでオアハカまで持ち帰ってやると意気込んでいた。
僕としては下調べの時点で、
① 追加料金が掛かるかも知れないがサイズ的には飛行機に預けられると確認済み(ちなみにロスまでの航空会社は追加なしでOK、ロスからオアハカまでのアエロメヒコは追加料金掛かるかも)
② 僕自身は腕がちぎれない限り、どんなに重い荷物でも運べる、運ぼうという強い意志(普段から重い荷物は苦でない)がある。
③ 旅行中のアドレナリンによる効果から、一時的に上がるように感じるアクシデント対処能力と筋力
から、手持ちで持って帰れるだろう!大丈夫!と判断し燃えていたのだけど…
その後、冷静な家族会議と方々への問い合わせの結果、手持ちを断念して郵便局からEMSで送る事となった。当然なんだろうけど、溜まった気合いの行き場を失った残念な結論でありました。
ちなみに断念した要因を、理屈的に挙げておくと
a. ロスとメキシコシティでトランジットがあるが、成田でオアハカまでの荷物として預けられないと、ロスでのトランジット時にピアノを半日(10時間)ずっと持ち運ばないといけない。小さな子連れでさらにピアノ運びながらターミナル移動したりトイレ行ったりご飯食べたりするのは大変である。
b. 空港宅急便で扱えないサイズで、成田空港まで乗り換えのある道のりを手で持って行く必要がある。沢山の各20kgクラスのスーツケースを運びながらピアノも担いで階段上がり下りするのは、やはり大変である。
c. 追加料金を取られるとしたら1万円くらい。EMSで送ると2万2000円くらい。ピアノで生まれる旅程の過酷さは1万2000円で回避可能。
以上三点から、何が何でもやってやるという気概で運ぶのは可能(と信じる)だとしても、常識的判断をしてみると、何でたった1万2000円を払わずにわざわざ旅の苦労とリスクを背負おうと思ったのか、自分が分からなくなるのであった。
うん、ピアノ手持ちをやめるのは当然である。(こうして一つのチャレンジが世の中から消えてしまったのであった。ううむ、「常識」に負けた感。)
EMSで送ると決めたわけだけれど、懸念として通関で関税が掛かってしまう可能性があった。
そのため箱からピアノを出して、家にあったドラえもんたちのシールをペタペタ。それで子供が居る家に置いてあったusedピアノ感を醸す。
さらに子供にクレヨン握らせて、大きな箱をキャンバスにして良いよ〜っと絵を描いてもらった。これで新品だとは思われまい、と期待を込めて。
と、ここまで下書きで書いていた。以下書き足し。
なんとこのピアノ、オアハカに帰ってきて約1ヶ月後、近くの村の郵便局から到着の知らせが来たので取りに行ってみると、ピアノではなく、関税で数千ペソ(数万円)払わないと受け取れないよー、と書いた紙を渡された。すぐカウンターの奥に、子供が落書きしたピアノの、あの大きな箱が見えているのに、なのに、数千ペソ(細かい金額は忘れた)分の大きな距離が残っている!
関税を払ったらメキシコで買うのと金額変わらない…という当たり前の衝撃的事実と、日本での手持ちにするかどうかの馬鹿げた経緯に費やしたエネルギーを思い出し、なんともやり切れない気持ちのまま関税の支払いをごねてみると、税関宛にレターを書いてみたらと村の郵便局員から提案された。(村の郵便局員っていつも利用者の味方なのだ)
中古電子ピアノと言い張り、新品の価値は無い!関税高すぎ!とその郵便局の小さなカウンターで思いつくままに陳述書を書いて送ってもらい、また確か1〜2週間待つと、関税額がディスカウントされたという通知が届いた。それでやっと、ずっと村の本当に小さな郵便局のたった一つしかない小さなカウンターのすぐ奥に置きっぱなしだったピアノを、やっと受け取り、それがオアハカの家に着いたのが、この前日だったのである。
今も思い出す。子供たちと興奮しながら落書きだらけの大きなYAMAHAの箱を開けて、音を出して瞬間のこと。