● チョコラテのルーツは4000年前
もともと南米原産のカカオが口にされ始めたのは、約4000年前のメキシコ南部~グアテマラあたりにて。それが3000年前のオルメカ文明で栽培され始め、マヤ、アステカの時代まで、カカオは石臼で挽いてお湯に溶かし、チレ(唐辛子)やスパイスを加えた飲み物として飲まれていました。
当時のカカオは希少性と高い栄養価から貨幣としての価値もあるほど貴重なものとして、口にできたのは王族や貴族だけ。カカオの学名「テオブロマ(神の食べ物)」もそんな理由から付けられました。
それがスペインによりヨーロッパに持ち帰られ、スペイン王室からフランスへ伝わり、ルイ14世を初め各国の王侯貴族に愛されるように。今や誰もが知っている“チョコレート”になったというわけです。
一方時を経て、メキシコではカカオはチョコラテとしてスーパーでも売られるほど広く飲まれるようになりました。
これはカカオを牛乳またはお湯で割ったホットドリンクで、ココア*に似ていますが、カカオの味わいがより濃厚な飲み物です。
*ココアはカカオマス(カカオ豆から種皮と胚芽を取り除いたもの)からさらにカカオバター成分を取り除いて作られます。
オアハカにはチョコラテと一緒に食べる専用のパン「パンデイェマ」があり、このセットが朝食の定番メニュー。朝の食堂を覗けば、このパンデイェマを浸しながらチョコラテを飲む人が沢山います。
そんなみんなに愛されているチョコラテですが、ここではスーパーなどで買うよりも、街のチョコラテ屋さんの店頭でカカオを挽いて作られているのを買うのが一般的です。
店頭に漂うカカオの香りと美味しさで、外国人やメキシコ人観光客にも大人気のお土産です。
ちなみに地域によっては挽いたカカオとチレで作る、古代スタイルのカカオドリンクを飲んでいるところもあります。
以前行ったオアハカの東にあるチアパス州とグアテマラとの国境付近のジャングルでカカオを栽培している村では、今も朝ご飯代わりにカカオ、チレ、とうもろこし粉をジューサーにかけ作ったカカオドリンクをジョッキ一杯を飲んで、ジャングルへ仕事に出かけていました。
● チョコラテの製造法
昔はカカオをメタテと呼ばれる専用の石臼と石の棒で手挽きしていました。
オアハカで老舗のチョコラテ屋を営むおばあさんの話で、小さい頃の彼女の家ではチョコラテを準備するためにメタテでカカオを挽く専門の女性を雇っていて、大家族が集まる日には朝からカカオを挽き始め、なんと学校から家に帰ってもまだ挽いていたそうです。
そんな昔の重労働が、今はモーターで石が回転して石臼と擦れ挽ける機械に代わりました。少し大きな村にはこの機械が食材別に数台並んでいる店があり、チョコラテだけでなく、村の人が持ち込んだとうもろこしなども挽いてくれます。
我が家でもお店でカカオを挽いてもらっています。砂糖、シナモン、アーモンドと共に2度挽きされたチョコラテは熱とカカオの油分(カカオバター)で半液状で出てきます。それが少し固まったら手で丸め約10g前後の粒状に。常温で乾かし、固まったら完成です。
オアハカでは家族用に大玉チョコラテが一般的ですが、我が家で作っているのはティーカップサイズ(100~120ml)です。
通常、チョコレートは洗練された風味・食感を出すためにカカオマスと追加のカカオバターから作りますが、オアハカの一般的なチョコラテの場合はカカオ豆から種皮のみ取り除いたものを使います。カカオ本来の味と栄養バランスです。
我が家のハシータレシピのチョコラテの場合はそこに種皮が付いたままのカカオ豆も混ぜて挽きます。
丹念なコンチング(練り上げ)によって出来る滑らかな味わいのチョコレートとは違い、ゴリゴリと石臼で挽かれ、カカオの舌触りやシナモンの香り残るオアハカのチョコラテには、ローストしたカカオ豆そのままの、本来の野性味も似合うと思うのです。
原材料はカカオ、砂糖、シナモン、アーモンドの4つだけ。
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